プルン美術


 ルノワールやモディリアニの裸婦像は美しい。あれは女性が若いときの美しさをキャンバスの上に永遠に残したものだ。それを「美術」という。ならば、1998年の春に放映されたテレビコマーシャルも「美術」である。
 テレビには水着姿の若い女性の腰とお腹のあたりが写っていた。カメラがゆっくり後ろに回ると、美しいヒップが写る。女性は何気なく、自分のヒップの下に手を入れ、持ち上げて離す。するとお尻がプルンとゆれる。ただそれだけである。ブヨヨーンやダラーンではない。プルンである。
 しかし世の厳しい人たちからイチャモンでもついたのか、放映期間は超短かった。スポンサー名は、ぼくもプルンに気を取られて、まったく記憶にないが、ディスクにでも保存されていれば、NHKの美術番組で、ときどき見せてもよいのではないか。
 ボッティチェリーやアングルやフェルメールにも劣らない。ドガピカソマチスやマイヨールやロダンにも劣らない。「何気なく」という純粋な「プルン美術」の独創性を高く評価したい。