畳の部屋のお行儀



山陽新幹線の主要駅内にあるホテルの和食堂は、何年か前までは、畳敷きの大広間ひとつきりだった。客が少ないときは、のんびりできてよかった。
 ぼくの前のカップルは、料理を待つ間、女性は足をくずして横座りをし、男性は畳の上にゴロンと寝転んでいた。その向こうには、老いた両親と大きな息子の三人連れがいたが、その息子もゴロンと寝転んだ。
 のどかな風景ともいえるが、畳の上でのお行儀作法は、もはや日本から完全に消え去っていた。
 腰が固いので、周りの座ぶとんをかき集めて積み重ね、その上に腰かけていたぼくが、どうのこうのと言える立場にはないが……。