にわか手話


 ある市民ホールで”高齢者の会”があった。
 まず、司会役のお役人さんが、マイクの前に立つ。そばに手話通訳の人がつく。聴衆にひとことあいさつをすると、くるっと聴衆に尻を向け、ステージの奥に腰かけていた、議員サンだか、何だか、エラソウな人に深ぶかとお辞儀をし、また前を向いてスピーチを始めた。
 
 さあ、それからは、この会が、いかにその”エラソウな人”のお世話になって開催できたかを、延々と述べるだけなのである。手話通訳の人がそれを一所懸命通訳している。
 ぼくは手話を知らないが、まず、ぼくが立ち上がって、聴衆のほうを向き、話している役人を指さす。それから左手のひらを上に向け、その上で握った右手をグルグル回す。日本人なら、みんな「ゴマをすっている」ことがわかる。やれば大爆笑になったと思う。やりたかった〜。