ありがとう カンポン (マレーシア)

1990年、国際的にも広く知られているマレーシアのマンガ家ラットさんが、世界各国の漫画家を招待してくれた。
彼が連載中の英字紙ニュー・ストレート・タイムズや、マレーシア政府観光開発公社、マレーシア航空などがスポンサーになって。

 マンガ家は、米、仏、比、中国、オランダ、インドネシア、タイ、ニュージランド、シンガポールから一人ずつ、みんなすごく絵がうまく、中国の漫画家先生を除けば、皆さん、英語もペラペラ。日本ではチャターボックス(おしゃべり)のぼくも、ここでは”サイレントボックス”になった。
 

 首都クアラルンプールからサラワク州の都市クチンに行き、ホテルからバスに1時間半も乗り、大きな河に出て、その乗船場から、小舟に分乗して河をさかのぼる。やがて波が激しくざわめき、支流に入った。両サイド、むかしは食人種がいた。さらに、細い支流に入ると、両岸は森林が生い茂り、不気味に静まりかえっている。 
小舟のベテラン船頭が、岸辺に生い茂った草むらの、少し踏み倒された跡のある土手を見つけて船を寄せる。ここが秘密の船着場だ。ぼくらも次々上陸する。イバン族の男たちがバラバラと現れて、ぼくらを森の中に案内した。槍は持っていない。政府が交渉してくれたから入れたのである。

森を抜けると、軒の高さが約10メートル、長さが約200メートルもあろうかと思われる高床式「ロングハウス」が現れた。
 
有名なのであろう。欧米やアジアやニュージランドやオーストラリアの漫画家たちは、前から知っていたようで、「オーッ!」とか「ウワー!」とか、声を上げていた。日本語に訳せば長屋なんだから、ぼくが詳しいはずなんだが、知らなんだ。


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