ありがとう ロングハウス (マレーシア)

そのロングハウスを壁で何十ものハウスに区切り、ワンハウスにワンファミリーが住んでいる。どの部屋も風通しがよさそう。
 幅の広い廊下は、長さ200メートル。ハウス寄りは通路であり、ゴザが敷かれた外側は、その上で作業をしたり、育児をしたり、おしゃべりをしたり、昼寝をしたりする場所である。つまり昼間の仕事と暮らしのすべてが、ここで行われ、地上に降りることは、きわめて少ないように思えた。 



広くて長い廊下である。さらにその外側には、荒めの板で広縁が取りつけられ、トイレらしい小屋がいくつも建っていた。(また廊下と縁との間には、雨を防ぐ大きな布の幕が、はじからはじまで、何十枚も垂れていたが、この絵では中を見せるために外して描いた)。

 
天井や柱に黒ずんだドクロが荒ナワにしばられて、いくつもぶら下がっているのには、ドキッとした。昔は首狩りの風習があり、その戦利品らしい。

 この高床に上がるための唯一の方法は、三角形の切込みを階段状につけた長い丸太ん棒で、廊下の一番はじに、掛けるというか、もたせ掛けてあった。
 ぼくらが上がるとき、その丸太ん棒の下で一人の老人がしゃがみこみ、豆のようなものを板の上に並べ、その上で生きてバタバタしているニワトリの首を持って振り回し、何か呪文を唱えていた。
 彼らは外部から持ち込まれる伝染病を極度に恐れ、魔よけの儀式を行うのだ。つまりぼくらが魔物なのであろう。

 丸太ん棒を登りきった高床の上では、この村の村長が待っていて、強い焼酎を飲まされた。これも歓迎の意味なのか、魔よけの意味なのか、いずれにせよ、次々と汚れた同じコップで飲むのだから、こっちも魔除けがほしくなる。
 
 ロングハウスの真ん中あたりに住む村長の家の前で勇壮な首狩りの踊りを見せてもらった。黒いドクロたちの気持ちやいかに? 

 

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