ナイフミラー

 披露宴などのテーブルで、花婿花嫁が背中側になって、見えないときがある。
 出入口から見れば、テーブルの奥だから上席といえないこともないが、やはり正面に見える席が一等席だろう。顔を横に向ければ見えるのが二等席、首を後ろにひん曲げ、イスをガタつかせて見るのは三等席だ。
 つまり、お祝いが少なかったせいか、何らかの理由で冷遇されているのだ。別にいちいちお色直しを見ることはないが、下手なスピーチをしているバカな上司の顔とか、合唱している女友だちの顔や体型などを、ちょっと見たいときもある。
 そういうときは、よく磨かれているナイフに映すと見える。
 欧米の権威あるマナーの本にも「ナイフで見ていけない」とは書いてない。