想像力が不足


 電話をかけながら歩くのは、だれにでもできるが、携帯を打ちながら歩くのはかんたんではない。聞いてみたら、あの、黄色い帯状の道の上を、足裏の感覚を頼りに歩いているのだそうだ。
 ぼくはアイデアに対して非常に感心するクセがあり、カシコイと一瞬おもったが、目の不自由な人に当たったらどうなるんだ。
 ひっくり返って、眼鏡も杖も散乱し、腰や頭を打ち、足を折ったり、最低、過失傷害罪、悪けりゃ過失致死罪で逮捕され、新聞に載り、お父さんはリストラに、お母さんはウツに、お姉さんもせっかくの縁談が壊れたりするかもしれない。カシコイけれど、想像力が足りないよ。