将軍さまのおせち


 何年か前、東京駅でよく「日本紀行味めぐり」という駅弁を買った。このごろ売っているかどうか、確かめてはいないが…。
 
弁当の裏ぶたには、日本地図と献立表と産地が印刷されている。
 
たとえば、「帆立貝の照り焼き」は北海道。「米沢牛の有馬山椒焼き」は山形。
「にんじん旨煮」は千葉。「焼き穴子」は東京。「小鯛の笹漬け」は福井。「丹波の黒豆含煮」は京都。「牡蛎しぐれ煮」は広島。「ゆずなます」は高知。「桜海老の炊き込みご飯」は静岡(ご飯はこしひかり)、といったぐあいに15種類ある。
 
 これを大晦日に東京駅に買いに行き、いちど、おせちにしたいと思っている。日本地図と献立の掛け軸を眺めながら、おおらかな気分になってお酒を飲む。これだけ全国各地から美味しいものを集めるのは、昔なら天下を治めた将軍さまか、天子さまでないと無理だ。
 たしか1個1240円。リーズナブルだ。

あけましておめでとうございます。